人は立場が変わることで初めて完全に理解できることがある。そしてスタートアップ型起業においては市場規模とチームのパフォーマンスがなにより重視される。

今回の内容はあくまで僕一個人の意見に過ぎない。
メンターとして所属しているアクセラレーションプログラムの意見とは必ずしも一致しないものということをご承知おき頂きたい。

今回のブログ記事では伝えたいことが二つある。
一つは「人は誰しも立場が変わることで初めて心の底から理解できることがあるということ」。
そして二つは「結局の所スタートアップ型のJカーブを描く起業においては、市場規模とチームのパフォーマンスが何より重視されるということ」。
この二点だ。
本当は要点は一つに留めておきたいのだが、最初の要点を伝えるにあたって、結局の所次の要点を書いたほうがよりリアリティが増す事に気づき、この様な構成に至った。
2点それぞれ対象セグメントが違う為、若干ぼやける内容になるかもしれないが、それでもどちらも大切な内容なので、どうか最後まで読んでもらいたい。

僕は2020年9月よりスタートアップ・イニシャルプログラムOSAKAというアクセラレーションプログラムのメインメンターを務めさせてもらっている。
他のメンター陣を見ると錚々たるメンツなので、正味な話僕だけ明らかに浮いてる感があるが、まあ求められた以上は精一杯パフォーマンスを出して貢献していきたいと思っている。
SIOでの僕の役割だが、メンタリングとは別に採択企業を審査するという任もある。
採択企業の審査自体は、何も初めて頼まれる類のものではない。
同じくメンターをしている他のアクセラレーションプログラムでも頼まれる事は多々ある。
ただ、大変申し訳ないことに何れもタイミングが合わず、今まで一度も参加出来なかっただけだ。
しかしSIOはメインメンターで、かつ審査がプレゼンを目の前で受けてリアルタイムに回答する形式ではなく、事前に書類を頂き審査した上で結果を渡すという形式な為、今回ようやくにして審査に携わることが出来たというわけだ。
この審査だが、ある程度の数の会社をチェックし評価するので、当然だが骨がかかったりする。
新サービスのリリースに重なったということで結構難儀な作業だったが、実際に審査を進めていくとすぐ不思議な感覚が自分の中に存在することに気づいた。
それは「審査員として大切にするポイントは、起業家として大切に思っているポイントと若干違う」ということだ。

まず僕には幾つかの顔がある。
2004年から2017年ぐらいまでは間違いなく僕は「起業家」として活動していた。
2018年頃になると起業家でいることに対して限界を感じ、起業家を伴奏してサポートするいわば「メンター(あるいはインキュベーター)」のような立ち位置になった。
しかし2020年9月現在に於いて、ひょんな事からまた起業家としての役回りを再び演じることにもなった。
そして今回新たに、(ほんの僅かだが)企業を選ぶ「審査側」という立ち位置が追加された。
つまり、起業家であり、サポート側であり、そして審査する側でもあるという、それぞれ一つの流れに置ける全ての立場を同時に経験しているとも言える。
そしてこれは当然のことだけれど、それぞれの立場にはそれぞれの言い分があり、そしてそれぞれ大切にしている事は当然違ってくる。
もちろん相手の言い分や考え方は知識として一通り把握することは出来るが、心の底から理解するには相手の立場に実際になってみるしか方法は無い。
今回僕は初めて審査側の言い分、考え方を初めて心の底から理解することになる。

さて、話を審査に戻そう。
僕がペラペラと審査の書類をめくりながら眺めていると(実際はPDFで送られてきたので、カチカチとマウスをスクロールしていた)、やはりどのアイデアも大変練られているものばかりで、そして熱いパッションが詰まっていてとても面白い。
「なるほど、こんな事を考えているのか」とか「ふむふむ、こんな勝機を見出したのか」と素直に感心してしまう。
んが、書類をみていく上で、僕は共通して、とある事を考えていた事に気づく。
それは「これはアイデア自体は微妙だけれど、面白い市場だし、起業家のポテンシャルは期待出来るな。まあプログラムを通じて僕らメンターがメンタリングしたら随分アイデアもブラッシュアップできるし、そしたらとても楽しみな事業になるぞ」ということだった。
これはつまるところ何を指すかと言うと、VCの人が口酸っぱく日頃から言ってる「VCが投資する時に重視する点はまずは市場規模とチーム力」という事と、僕が感じたことが共通するという事だ。
もちろん僕はVCの人にも日頃から接しているし、彼らの重視する点は重々承知している。
んが、「起業家」としての僕や「メンター」としての僕の視点においては、この重視する点が必ずしも一致する限りではない。
起業家としての僕は、正味な話スタートアップ的起業、つまりエクイティを前提としたJカーブを描く様な起業にはもうあまり興味はなく、むしろ一次関数の成長曲線を描くスモールビジネスのほうを好む傾向にある。
そしてメンターとしての僕は、そもそも選り好みできる権利はなく、与えられた案件に対して最大限パフォーマンスを発揮するだけなので、その中において面白いアイデアや好きなジャンルのビジネスを求める傾向にある。
が、アクセラレーションプログラムの審査側としての僕の場合、その事業がどの程度グロースし社会にインパクトを与えるか、というのが前提にあり、必然的にその様な視点で見る(それはある種VCが選ぶ視点に近いとも言える)。
そうなった場合において、アイデアが面白いか否かは僕はあまり重視しない。
なぜならアイデアなんてアクセラレーションプログラムのメンタリングを通してドラスティックに変更されるのを僕は知っているし、アイデアの質にしたって僕らメンターが手助けしたら幾らでも向上出来るのが分かっているからだ。
では逆に何をみるかと言ったら、先に書いたように、市場規模とチームのポテンシャルだ。
市場規模は僕らメンターが如何に関与したところで簡単に変えられる類のものではない。
故に小さな市場でビジネスを始められると、どんなに優れたアイデアとは言え「全部取りきったところで高々知れている」と判断してしまう。
逆に、大きな市場で、かつお金がジャブジャブ流れている市場、さらに言えば今注目されている市場なんかで勝負したいという提案を見ると、仮にアイデアが微妙でも「お、ここは伸びてる市場だし、僕らが力を貸してアイデアをブラッシュアップさせたらワンチャン一気に伸びるぞ。期待できる」と思ってしまう。
そして市場規模と同じく僕らメンターが関与できない部分なのが、チームのポテンシャルだ。
つまり、そのチームがそのビジネスを果たして本当に実行できるのか、伸びしろはあるのか、地頭は良いのか、ビジネスアイデアは絵に描いた餅の大言壮語になっていないか。
まあそんなところを総じた部分だ。
ここも正味な話とても重視してしまう。
どんな壮大なドラマを語ったところで、結局実力が伴っていなければ成功しないのは誰もが分かっているのだ。
この様な視点は審査側に回るまで、もちろん知識としては知っていたし頭でも(おそらく)理解していた類のものだった。
しかしそれは自発的に出てきた観点ではなく、そして起業家としての自分の考えとは若干ずれていた事もあり、完全には心の底から理解できていたとはおよそおそらく言えなかった類のものでもあった。
それが今回審査側に回ることで自発的に考えるようになり、そして初めてその大切さを肌で実感できた、というわけだ。

当然だけれど、人はみな、ポジションによって考えていること、求められていることは違う(ポジショントークという言葉が全てを物語っている)。
そして複数の視点から視ることによって初めて「幅」が広がる。
起業家だけやっていたら、サポート側の視点はわからないし、VCの気持ちも到底理解できないだろう。
ただ、ならば俯瞰して捉えているVCが常に正しいかと言えばまったくもってそんなことはなく、彼らは彼らでVCだけやってるようならば、起業家のもつ苦しみや孤独は一生理解できないし、そんなある種机上の空論のようなものは実際の起業とはほど遠いものがある。
僕は結構珍しく(そうでもないのかな)、起業家をやりつつ、サポート側もパラレルで行っているので、どちらの意見もわかり、そしてそれをリアルタイムでそれぞれに活かすことが出来る。
サポート側の視点を手に入れた起業家は往々に現役を退いている場合が多いが、僕はそこで手に入れた視点を起業家としてすぐに活かすことが出来るし、逆に起業家として手に入れた知見をすぐにサポート側で活かすことも出来る。
非常に恵まれている立場だ(もちろん苦労のほうが圧倒的に多いが)。

今回僕が学んだ二つの教訓は、またすぐ僕の血となり肉となるだろう。
そして願わくばこのブログを読んでくださった方に、どちらか合う方だけでも学びになることを祈るばかりだ。
というわけで、本日のブログはこれで終了とする。

あ、そうそう、最後に一つの報告と、一つのおまけを記載しておく。

まず今僕が数年ぶりに起業家として興している事業 エリンギ について。
先月からβテストを開始したところ、思ったより遥かに多くの反響を頂いた。
もう自分でも驚くばかりの好反響で、正味な話自分用のプロダクトとして開発をしていただけに過ぎなかったのだが、欲目がでた僕は数百万 身銭を切って追加開発を施してしまった。
結果、更に更に好反響を生み出し、なんと来月辺り、人生四社目となる株式会社を作るに至ることになった。
エリンギ自体は十分実用化に耐えられるレベルになったので、デザイン周りなどを調整した上で、来月頭に正式リリースを行う。
こちらその日になったら諸々発表をするので楽しみにしておいてもらいたい。
まあもう本当に誰に見せても反応が良く「プロダクトでこんなにワクワクするのは久しぶりだ」という声ばかり聞くぐらいには自信のある代物だ、と書いておく。
かわいいよ、僕のエリンギちゃん。

もうひとつのおまけは、いつものように僕の運営する起業家コミュニティ IT startup community についてだ。
最近実はインタビューにハマっていたりする。
つまるところ、外から見てあーだこーだ言うよりも実際に中の人に話を聞いた方が早いという、非常にシンプルな結論に至り、気になるサービスに片っ端から声をかけさせてもらっているのだ。
そのインタビュー内容は大半がWEBに落ちていない所謂中の数字関連が多く、僕個人としても大変学びがあるものばかりだ。
もちろんそれ以外のコンテンツも充実しているし、前述のエリンギについては事細かく報告していくつもりだ。
こちら無料お試し枠もあるので、ぜひ参加してもらえないだろうか。
皆さんのお申込み、心よりお待ちしている。

以上、報告とおまけをもって、本記事は終了とす。
ご一読、感謝する。


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