錬金術なんてものはそうそう成功しない

今回書くテーマは「無からお金を生み出そうとするのはとても難しい」ということだ。

どうしたことか、スタートアップ界隈の特に若い人が、この途方も無い錬金術にチャレンジしたがる傾向にある。
チャレンジ自体はとても素晴らしいことだとは思うが、往々にして彼らは自分たちのやろうとしていることの難易度に気づいていない。
今回は警告を込めて綴ってみる事にする。

さて、この場合の錬金術とはなにか。
それは、全くお金の流れがない言わば「無」の状態から、新しくお金を生み出そうという行為を指す。
それらは大概、今までに前例がなかった試み、つまり「新しい文化を創り出すことへのチャレンジ」とも言いかえられる。

具体的に一つの例を上げてみよう。
僕は職業柄若い人と触れることが多いのだが、オシャレな女の子が持ってくる起業のアイデアで最も多いのが「オシャレな女の子が、ファッションに疎い男の子の服の買い物に有料で付き合ってあげるサービス」だ。
正味な話、4人に1人の割合でこのアイデアを持ってくる。
まあこのアイデアを思いつく気持ちを幾ばくかは理解できる。
オシャレが好きな女の子はファッション業界に関わって生きていきたいし、ファッション有料コーディネートサービスには難しい知識や資格は必要ではなく、原価がかからないので種銭も要らない。
加えて言えば、パッと聞いた限りに於いてはなんとなくオシャレ感がある。
故に若い女の子はこのサービスをやりたがるわけだ。
んが、皆さんも御存知だとは思うが、このサービスは決して上手くいかない。
少なくともよほどドラスティックな変化(コロナのような)が無い限りにおいては、当面の未来においても日本ではワークしないだろう。
それはなぜか。
単純な話「日本ではファッションの買い物にお金を支払って付き合ってもらう文化がそもそもない」からだ。
よほど特殊な事情がない限り、ほとんどの人が自分の服を買いに行くのに見知らぬ赤の他人にお金を渡して付き合ってもらったことはないはずだ。
日本では誰もそんなものに対してお金を払うという発想が無いのだ。
そんなもともとお金を払うものでもなかったものに、いきなり「有料でコーディネートしま~す」と言われたところで、人はまず金を払わない(よほど可愛い女の子が言ってきたら、別の意味合いを期待して出す事はあるかもしれないが)。
これが錬金術にチャレンジするという事、そしてその途方も無い難易度なのだ。
悲しきかな、僕は2004年から起業をしているが、当時からこのファンキーなチャレンジをしたがる人は一定数いて、そして2020年の今ですら定期的に出てくる。
まあ人間なんて変わらないものなので、おそらく10年後も20年後も出てくるのだろう。
彼女たちは自分たちの可能性を一切疑うことはなく、希望をもってはじめ、そして最初の挫折を味わうことになるのだ。
そんな彼女たちに僕の声が少しでも届くのを願うばかりだ。

さて、話はここで終わりではない。
良い機会なので、ついでに力も金もないスタートアップはどのような着眼点でアイデアを探せばよいのかを簡単に記しておく。
この文脈で一言書くならば、それは「リプレイス」だ。
無からお金の流れを生み出すのはとてつもなく難しいのは書いた通りだが、もともとあったお金の流れを自分たちのところに手繰り寄せることならば、難易度は格段に落ちる。
このリプレイスという概念を頭にいれて考えるのが良い。

一つ例を上げる。
家具のサブスクリプションサービスで CLAS というサービスがある。
まあ読んで字のごとく、家具をサブスクリプションでレンタルできるサービスだ。
僕は個人的に使ってみたことはないが、それでも「物を所有したくない人」や「設置・組み立てが面倒な人」、「初期費用を抑えたい人」なんかにはとても人気だとか。
実際中の人の一人に話を聞いたこともあるが、ビジョンやら何やらとても素晴らしいサービスだと思った。
このCLASだが、先程のファッション有料コーディネートと同じ要素がある。
それは、今までになかった新しい文化を創り出そうとチャレンジしている事だ。
今まで家具なんてのは買うのが当たり前であり、レンタルして済ませるという発想は、少なくとも僕みたいなおっさんにはまるで無い。
そこに若い世代の価値観に沿った新しい文化を創り出そうとCLASはしている。
それならばこのCLASチャレンジも有料コーディネートサービス同様に途方も無い Never ending story なのか、と言われると実はそうではない。
なぜならCLASの場合は、既にお金が生まれている流れがあったからだ。
大半の人は家具のレンタルはしない。
が、家具は買っていたのだ。
つまり家具にはお金をもともと落としていて、それが「買う」という行為に使っていただけで、これを「借りる」という方向にもっていけばよいだけなのだ。
これこそがリプレイスの概念であり、CLASと有料コーディネートサービスの決定的な違いだ。

家具・家電のサブスクリプションサービス CLAS (クラス)

無からお金を生み出すことの難しさ。
是非是非念頭に入れてサービスを考えてもらいたい。

あっと、最後に小咄を一つ書いておこう。
スタートアップの短い歴史の中で、無からお金を生み出すことに成功した(新しい文化を創った)見事な例がある。
それが田村健太郎氏が作り出したSynapseというサービスだ。
今では当たり前となったオンラインサロンという新しい文化を0から創り上げた氏の功績は見事という他ない。
コレほど完璧な創出を僕は後にも先にも殆ど知らない。
それぐらい素晴らしい。

以上、錬金術について綴ってみた。

あ、そうだ、ついでに恒例の宣伝もしておこう。
僕が運営する起業家コミュニティ IT startup community だが、お陰様で有料会員数100人が視野に入りつつある。
なんとか年内には達成したいなと思う今日このごろだ。
そんなコミュニティだが、この速度を早めるために学割を導入することにした。
U22の学生ならば月額なんと980円で参加することが出来る。
是非この機会に学生の皆さんは参加してみてはもらえないだろうか。
結構多種多様なコンテンツを揃えていて、まあ値段分ぐらいの価値は十分あると思う。
もちろん学生以外の方も正規コースで大歓迎だ。
みんなで盛り上がっていければと思う。

それでは今回はこの辺で。


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