バーティカルマッチングサービスが死に筋な理由

今回はC向けバーティカルマッチングサービスの可能性について語りたい。

この場合のバーティカルマッチングサービスとは何か。
読んで字の如く業界特化型のマッチングサービスで、それは例えば「カメラマンとカメラを撮ってもらいたい人のマッチングプラットフォーム」であったり「メンタルを病んでる人と癒やすことが出来る人のマッチングプラットフォーム」のことを指す。
僕はメンターという職業柄、日頃より多数のサービス相談に乗るが、正味な話このバーティカルマッチングサービスの相談が一番多い。
おそらく、システム的にイメージしやすく、難しいスキルや知識も要らず、マネタイズまでの期間が短いというのが理由なのだろう。
しかしちょっと待ってもらいたい。
本当にC向けバーティカルマッチングサービスで単月黒字化が出来るのか。
今回はそれについて長文を書く。

まず僕の結論から言うとC向けバーティカルマッチングサービスは基本的にほぼほぼ死に筋だと考えている。
身も蓋もない事を言えば、普通にやるならば鼻から無理だ。
その一番の原因と言えるのは、バーティカルに切り出した分、アッパーが限りなく低くなるからだ。
どのぐらい厳しいかいつも僕が言ってる分かりやすい例を上げよう。
バイネームでは名前は出さないが、とある有名なマッチングプラットフォームがある。
それは全ジャンル展開しているプラットフォームで、バーティカルではない。
写真だろうとビジネス相談だろうと恋愛相談だろうと何でも対応可能だ。

そしてマッチングプラットフォームではとても良く知られていて、最もメジャーなサイトの一つと言っても過言ではない。
僕は個人的な事情からその運営の方々と非常に懇意にしていただいており、もう何年も前からプライベートで会う度に「売上どう?単黒になった?」と聞いているのだが、答えはいつだって「NO」だった。
そのサイトでは常にひっきりなしに売買が行われているし、傍から見てもとても活発に見える。
加えて全ジャンル展開済み。
にも関わらず、単月黒字化が果たせていないという。
そんな状態があるのに、それを更にジャンルごとに切り出したバーティカルには勝ち目はあるんだろうか。

さて、幾つか例を上げる前に、バーティカルマッチングサービスに必要な要素を書いておく。
バーティカルマッチングサービスにおいて最も重要なものは「単価」と「フリークエンシー」と「リピート率」と「π」だ。
単価とはもちろんそのままの意味で、一トランザクション毎の価格を意味する。
フリークエンシーとは、そのマッチングがどのぐらいの頻度で必要とされるかを指す。
リピート率は、その需要が継続的に長期間必要とされるのか、それともワンポイントで必要とされるか、だ。
πとはもちろんその対象の数である。
これらの要素が高い水準で上手く絡み合うことで売上が上がっていく。

例えばよく見るサービスの一つにメンタルケアサービスがある。
メンタルを病んでる人とそれを癒せるメンターをマッチングさせるサービスだ。
鬱病が増えていくこの社会に必要とされていて、それでいて時流にも乗っている様にも思える。
故に雨後の筍のように類似サービスのリリースが後を絶たない。
だが果たして本当にPayするのだろうか。
メンタルケアの問題点はまず単価が低すぎることだ。
メンタルを病んで休職中の人が、一回の取引に5万も10万も出せるかと言えばとても出せない。
しかもワンショットで終わるならばともかく複数回やるのが前提にあるので尚更だ。
さらに目に見えた効果がすぐに現れるわけでもなく、物が貰えるわけでもないのだから、いくら話せて心が軽くなったと言っても、そんな高額なんて出せるわけはないのだ。
まだまだメンタルケアを個人のメンターにお願いする文化が殆どないのでπだって限りなく少ない。
しかも厄介なことに、競合優位性が構築しづらく、それでいて差別化も効かない。
加えて参入障壁も低いし、ビジネスモデル自体も共存モデルときたもんだ。
そうなった場合どういうことが起こるかと言うと、ただでさえ少ないπを、次から次へと現れてくる競合たちと奪い合う形になり、一強に集中すること無く、僅かな利益を少しずつ手に入れてキープするという、結果誰一人として幸せになることのない地獄のような状態になる。

とりあえず分かりやすい様にそろばんを弾いてみようか(僕は何でもかんでもどんぶり勘定でそろばんを弾くのが好きだ)。
仮に単価を5000円としようか。
それで一日辺りコンスタントに10人の申し込みが来たとする。
それが1年365日続いたとしよう(まあありえないが)。
で、手数料はWEBのマッチングなのであまり取れないから、それでも多く見積もって25%にしようか。
そうなるとどういう金額になるかと言うと、パチンパチンとそろばんを弾くと、結果37万5000円という数字が出てくる。
メンタルケアという領域でひっきりなしに10人も毎日申込みが入るというシチュエーションがそもそも前提としてありえないのに、そのありえない状況下においてでさえも入ってくる利益は37万5000円だ。
ここから人件費や事務所代、そして忘れてはいけない広告費を払うと、当然ながら一人分もPayしないだろう。
ユニットエコノミクスに照らし合わせてみる。
単価が5000円で手数料が25%ということは、一回あたりの利益が1250円。
でまあ年間のチャーンがちと想像もつかないので、一人あたり平均して4回ぐらい利用してくれて、そこで退会したとしよう。
その場合LTVがちょうど5000円になる。
でまあ一般的にはCACはLTVの3分の1が健全と言われてるので、CPAは、んじゃまあざっくり1500円としてみようか。
CPAが1500円……。
仮にリスティングを出した場合、CPCが500円だとしたらCVRが33%を弾き出さなければこの数値は出てこない。
仮にLTV限界までCACを出したとしても、とてもとても健全な数値が出る見込みが無いのがよく分かる。

さて、ここで一つ気になる点があるとすると、メンタルケア業界の雄と言うべき cotree の存在だ。
あそこはC向けマッチングサービスでは頭一つ抜けた知名度を誇っている。
正味な話ここの売上が気になって気になって本当に仕方ない。
果たしてPayしているのか。
んが、残念ながら何回かコンタクトを試みたが、連絡がつかない状態で、答え合わせができていない。
個人的な憶測で申し訳ないのだが、あくまでC向けに展開している cotree だけで見るとPayしていないように思える。
取り立ててアップセルなどもないようなので。
ただ流石そこは cotree であって、B向け展開を様々に行っているので、その辺りで収益を出していても決して不思議ではない。
まあもし関係者がいたら是非連絡をくれたし。

さて、メンタルケアを一つ例に出してみてもお分かりの通り、C向けバーティカルマッチングサービスは冷静にそろばんを弾くとかなり厳しい。
が、そんな中、例外とも思えるようなジャンルが2つほど存在している。
それが「占い」と「出会い」だ。
正直この2つだけはもうドル箱のようにお金が落ちると言っても過言ではない。

まず最初の占いだが、これはもう理想的だと思える。
単価は高いし、フリークエンシーは凄いし、リピート率も高く、πも多い。
男性はほとんどやらないジャンルだが、好きな女性は毎日占ってもらう人も多いと聞く。
それも長い期間延々とだ。
んが、最高と思える占いにも1個だけ非常に厄介な問題点がある。
それが「CPA高すぎ問題」だ。
そう、実はこの占いだが、聞くところによるとCPAが6000円から高い時には13000円もするという。
理由としては日本には数人だけ1分1000円取ってる占い師がいて、彼らの影響により跳ね上がってしまっているらしい。
いかなドル箱と言えど、CPAが13000円までいくとなかなかにしてPayするのは厳しい。
ここだけなんとかなれば最高なんだが残念で仕方ない……。
余談だが、この問題を最高に頭良く解決しているのがココナラだ。
ここは非常に上手いやり方でCPAを低く抑え占いで高い収益を上げている。
ま、この話は長くなるのでここでは割愛しよう。

あとはまあ出会いだが、これはもう説明する必要すらないかもしれない。
皆さんも一度ぐらいは使ったことがあるのではないか。
単価は安いけど、長期間使う。
そして一度退会しても悲しきかな別れたらまた戻ってくる、なんて事も経験したことはないだろうか。
まあかくいう僕もその口で、Omiaiを何度も使ってはくっつき、そして離れては戻ってくる、なんてことをしている。
つまり何を言いたいのかと言うと、僕は今恋人を募集しているということで誰か連絡をくれ……じゃないや。
ええとまあ、なんというか、出会いという強烈なインセンティブがあるので、人はもう砂糖に群がる蟻の様になる、ということを言いたいわけだ。

故に上記2つのカテゴリーに関してはPayしている、と僕は考える。
それ以外でPayしている例を残念ながら僕はパッとすぐには思い出せない(家政婦や介護などは需要はあるんだけど、まあ別の問題点があるのでここでは除外。詳しくは過去記事をご覧いただきたい)。

とまあここまで一気に書いたが、これはあくまでC向けに限った話であって、これをBにまで広げると大いに可能性は上がる。
皆がびっくりしたビザスクのデータから分かる通り、単価は高く、フリークエンシーもリピート率も高く、πもある。
おまけにフルサポートなどを謳いテイクレートを上げて、諸々アップセルを図れば利益は跳ね上がる。
まさにBだから出来る荒業だと言える。
ま、僕は基本的にC向けWEBサービスが専門だから、Bには触れないけれども。

と、長々と話したが、バーティカルマッチングサービスの難しさについて少しでも理解してもらえると嬉しい。
もちろん僕が知らないだけで上手くいってる例なんて結構あるだろうから、そういうのがあったら是非教えてもらいたい。
あるいは「冗談じゃない。うち、単黒になってまっせ」的なのがあったら真っ先にご連絡貰えれば嬉しい。
中のデータを簡単にでも教えてもらえるのならば、菓子折り持ってお伺いするので。

以上、これにて今回の話は終わり。
何か感想やご指摘等があれば優しく教えてもらいたい。

あ、 cotree 関係者がいたら本当に連絡をくれたし。
あるいは誰かCEOなりCOOなりへお繋ぎくれるととても嬉しい。

よろしくどうぞ。

追記

遅まきながら何故か某所でバズってるようなので慌てて追記。
バーティカルマッチングサービスの定義にもよるが、もちろん広義に取れば単黒になっているところは腐るほどある。
MENTAとかSkebとか。
ただ個人的には前者はスキルシェアリングだと思っていて、後者はコミッションであり、僕の中では狭義の面では前述のカテゴリーには含んでいない。
この点ご留意頂きたい。


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