介護マッチングサービスについて思うこと、そしてちょっとした新規事業の話。

僕は今メンター(あるいはコンサルタント)として、日々随分な数のメンタリングをしている。
その中で最近やたらめったら多いのが「介護士と介護が必要な人を安価でマッチングさせるサービス」の相談だ。
正味な話、隔週一回は受けてる気がする。
相談をしてくる人の大抵は介護福祉士さんで、現場での豊富な経験がある方が多い。
人は不思議なもので、そうやって介護を経験していくと、少なからざる人が「今度、法改正が起きる。その際、介護をライトに必要な人がドンドン増える。そしてニーズもあるから起業したらヒットする」と思うようで、その結果、僕は隔週一回毎回毎回同じ様な説明を受け、毎回毎回同じ様なアドバイスをすることになる。

このビジネスの一番の問題点は何か。
それはずばり「需要が多すぎて供給が間に合わない」ところだ。
簡単に言うと「介護士足りないよね」というシンプルな話だ。
これは家政婦マッチングサービスやペットシッターマッチングサービスにも通ずるところがあって、つまるところ、あれだけ激務で、給料も安く、にも関わらず扱う商材が命なので責任がでかいとなると、敢えてそれを人が選ぶ理由があまり見つからない。
そんな状況にも関わらず巷に溢れる介護マッチングサービスは「他より安価で依頼できます」というのを謳い文句に掲げている。
お金を出す側(買い手)とサービスを提供する側(売り手)、一般的にはお金を出す側のほうが貴重なケースが多く、そちらにフォーカスを当ててサービス設計をするのは当然だが、今回のようにパワーバランスが逆転しているレアな場合は、当然主導権のあるサービス提供側に沿った作りにしなければならない。
つまるところ「うちは他より安価で介護を頼めますよ!1時間2000円ですよ!気軽ですよ!」ではなく「うちは介護士へ給料を5倍出してますので介護費用も5倍高いです!1時間10000円です!でもいつでもサービス受けられますよ!」というのが筋が通っている。
しつこいようだが、前者が成り立つのは介護士が余りまくっている状況の話であり、足りてない今は後者の戦略が正しい。

そしてこの介護士マッチングサービス相談においてもう一つお決まりのツッコミどころがある。
僕に相談に来る人は皆して同じことを言う。
「依頼が殺到してるんです。捌ききれません!事業のニーズを確信しました!最高の手応えです!介護士さえいたら幾らでも伸びます。どこで見つけてきたら良いですか!教えて下さい!」と。
いや、しかしお前ちょっと待てよ、と。
このサービスの問題点は最初に書いたとおり、需要過多で供給不足な部分であり、そりゃ立ち上げたら依頼が来るのは誰も分かってる。
問題は捌く人を確保できないから、誰も彼も高い質を維持して安定供給することができず、潰れていくわけだ。
ジャンルは違えど、「DMMおかん」が良い例だろう。
DMMおかんだって依頼が殺到しすぎて捌く人(家政婦)が足りず、DMMの豊富なお金をもってしても確保できずに潰れていった。
何度も書くがこのビジネスのビジネスドライバーは「介護士の確保」だ。
家政婦マッチングなら「家政婦の確保」、ペットシッターマッチングなら「ペットシッターの確保」。
これができる算段がついてるならビジネスは成功するし、逆に言うとビジネスドライバーのこの部分をサービスを立ち上げてから確保していくという考えならば、 厳しい言い方で申し訳ないが、そもそもこのビジネスをやるべきではない。
それをするぐらいなら最初は介護士のコミュニティを作ることに邁進したり、介護士がよく見るメディアを作ることから始めるのが筋だ。
そこから手を付けて貴重な貴重な介護士への導線が確保できたら、あとはもう何でも好き放題できる。
マッチングなり人材派遣なり。
おめでとう、世界は君のものだ。

さて、では上記のことを踏まえた上で、もう少しだけ深堀りしてみよう。
今回の場合、ビジネスドライバーは介護士の確保。
しかし同時にボトルネックもまた介護士の確保という厄介な状況だ。
介護士の数がアッパーになるのに、集めるのが一番難しい。
数の確保がビジネスドライバーになるビジネスに於いて、集客がボトルネックになってしまうと、それはもう著しく成長度合いが落ちる。
貴重なπを競合と取り合わないといけないし、更にいうと少子化が進む現状増える見込みもない。

そこで今回僕は敢えて逆張りの「富裕層向け介護マッチングサービス」を提案する。
簡単に言うと「一時間5万円で介護しますよ!24時間対応しますし、基本人員は確保してるのでいつでも対応できます。待たせません!」みたいな感じだ。
これならば、介護士への支払う給料が高めになるので確保が楽になり、少頻度高単価案件なので1件辺りのコスパが良い。
もう少し嫌なことをいうと、富裕層には「金持ち喧嘩せず」という素敵な精神を持ち合わせてる人間が一定数いるので、やたらめったら面倒なクレームはそこまでこない。
逆に貧困層こそクレームを出すイメージがある。
「数が少なくて良質な富裕層」と「数が多くて厄介な貧困層」を比べると、どちらがユーザーサポートの負担が増えるか、火を見るより明らかだろう。

少頻度で高単価の案件ならば介護士の数も少なくてすむのでボトルネックも解消でき、カスタマーサービスの負担も少なく運営コストが低い。
かたや、高頻度で少単価ならば介護士の数が必要で難易度が格段に上がり、案件も数をこなさないといけないのでカスタマーサービスの負担が大きく、運営コストも高い。
冷静に考えて、どうみても前者のほうが良いと思うだろう。

以上、介護マッチングサービスについて常々思っている事と、新規事業について書いてみた。

あ、最後に言っておくと、僕のFacebookなりTwitterなりLinkedInなりの友人には、そこそこの人が上記サービスを運営してたり、携わってる人がいる。
実際僕にメンタリングを依頼し、上記のことを説明した上で、繋がり申請をしてくれて、友だちになってる人も多い。
でも今回の記事は、決して特定のサービスに向けてDisってるわけではない。
汎用性の効く話題を提供し、IT startup界隈のリテラシーを多少なりとも上げたいなという思いから書いてるだけに過ぎない(あと毎回毎回この説明をするのも正直ダルいし飽きてきた)。
故にこの記事を読んで、「むっきー!池森さん、僕のサービスのことそんなふうに思ってただなんて!」と怒らないで頂きたい。
本当に特定のサービスを思い浮かべてるわけではないのだ。

というわけで、今回はこのへんで。

追記

投稿してからすぐに冷静になり、Facebookの方には補足をしていたのだけれど、今回Twitter経由でご覧になられた方から予想していた感想が届いたので、ブログにも追記しておく。
今回の富裕層向けのアイデアについてだが、ビジネスとして捉えた場合は非常に理にかなっているし、合理的な内容なので、問題ないと思っている。
ただ一点欠けている(そしてそれは非常に大切な)ものがあるとすれば、現場の人、起業を考えてる人のピュアな思いだ。
おそらく介護マッチングサービスを立ち上げようと思ってる人は、「ビジネスで一儲けだ!富裕層から金巻き上げてやるぜ!」という気持ちではじめているわけではなく、「介護が行き届いていない現状をなんとかしたい!このままだと日本が潰れる!生活に困る人が出てくる!救いたい!」というピュアな気持ちで始めているのだろう。
そういう人たちに対して、何も知らない外野の僕が「いや、君のビジネスが合理的じゃないし筋が悪いよ。貧困層は放置して金を持ってるところから取ったほうがいいよ」と言っても、それはもうお門違い、勘違いも甚だしいわけである。
人はみな僕みたいにビジネスベースに捉えてドライに進めてるわけではない。
熱いパッション、崇高なビジョンの下、自分の思いを信じて起業をしたわけだ。
これは、書き終わって校正を入れた時点では気づかなかったんだけれど、投稿してブログとして冷静に読んだ時に、どうも違和感を感じ、深堀りを自分の中でした時に気づいた点だ。
内から出た自分自身予想もしなかった良い学びと言える。
なのでこの点で不愉快な気分になった方にはお詫び申し上げる。
本来ならば削除も検討すべきなのだが、まあ内容的には示唆に富んだものなので、残しておく。
ただ一点自分自身のスタンスのフォローをしておくと、「道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である」という言葉がある通り、ビジネスは稼いでなんぼの側面もある。
如何にご立派な事をのたまっても、金を稼げなきゃ続けられないわけで、続けられないのならば頭の中で思い描いてる理想的な世界も実現できず、結局は誰も救えない、というのが現状だ。
故に、冷静にビジネスとして収益を上げるというスタンスも否定されるものではない、という事を書いておく。

ビジネスは本当に難しい……。


介護マッチングサービスについて思うこと、そしてちょっとした新規事業の話。” への2件のフィードバック

  1. 時間が空いた時にwaaiに注力する方針なのかと思っていましたが違うんですか?
    waaiは別の人が開発されているそうですが、でもwaaiもtsamの公式サービスですよね?
    リリースしたらそれで終わりではなくアップデートしてほしいです。
    「近日に機能を追加予定」なのに、もうすぐ一年が経ちます。
    「近日」という言葉を信じた私は悲しいです。

    • waai は弊社パートナーによる強い要望で開発をはじめました。
      本人自身が切望していたサービスですので、大変思い入れがあり、アップデートをしてどんどん開発をしていきたいという欲求は今でも強くあるようです。
      しかしながら昨今私が顧問をしている関係会社からの開発依頼が非常に集中しており、本人が望んでいてもなかなか開発に着手できない状況です。
      私も彼もこの現状をとても不本意に思っております。

      waai を日頃よりご利用いただきありがとうございます。
      また失望させてしまったこと、申し訳ありません。
      私としてもtsamの初の自社サービスという事で、なんとか時間をみながら進めていきたいと思っております。

      どうか末永く見守って頂けますと幸いです。
      今後ともどうぞ宜しくお願いします。

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