トランザクションが生まれないことには意味がない

光栄な事に、僕は今5つのアクセラレーションプログラムでメンターを務めさせてもらってる。
お陰で面白いサービスには出会えるわ、良いメンターネットワークには入れるわ、説明コストは浮くわ、と良いこと尽くめだ。
まあただメンターをやればやるほど当然だがメンタリングする機会が増える。
僕はアクセラレーションプログラムのメンター以外にも個人でメンタリングを受け付けてるし、それ以外にも僕の運営するサロンからメンタリング依頼が来たりと、まあ結構メンタリングばかりしてる日々だ。
そんなこんなで過ごしてると、当然だが幾つかの共通点が見えてくる場合がある。
今回はそのうちの一つ、「トランザクション発生率」について実例を交えて語ってみよう。

まず前提として、今回は僕が得意とする領域のC向けWEBサービスに限った内容となっている。
B向けサービスはもちろん、オフラインのサービスには適応されない。
この点をご理解いただいた上で読んでもらいたい。

さて、トランザクションの発生率とは何か。
それはC向けWEBサービスにおいて、何かしらユーザー同士での取引が発生する確率を意味する。
例えば皆さんご存知タイムチケットならば、写真を撮ってもらいたくて誰かに依頼して実際取引が決まる事を指す。
で、だ。
このトランザクションが発生するには、幾つかの要素がある。
それは概ね「時」「場所」「ニーズ」で構成されており、これをカケジクにすることで発生率が大体分かる。
一つ要素が増えればトランザクション発生率はガクンと下がり、逆に要素を潰せば発生率は上がる。

どういうことか。
例えば先に上げたタイムチケットの例でみてみよう。
タイムチケットで写真を頼む場合、まずは「時」を合わせる必要がある。
撮影者と被写体は同じ時間に会う必要があるからだ。
次に「場所」も一致していなければいけない。
北海道に住む被写体が、たとえ暇でも沖縄に住むカメラマンに依頼をしてもしかたない。
そして「ニーズ」。
これもタイムチケットの場合必要で、仮にその時その場所で暇な人同士がいたとしても、今回でいうと片方はカメラマンである必要がある。
暇だからといって相撲取りに写真を依頼しても仕方ないのだ。
つまりタイムチケットの場合「時」と「場所」と「ニーズ」が一致していないとトランザクションは発生しない。
それでは同じスキルシェアリングのココナラはどうだろうか。
タイムチケットと違いオンライン完結型がメインのココナラだと、まず「時」という制限がない。
なぜなら、ココナラでバナーを作ってもらう依頼をした場合、デザイナーは依頼者の生活時間に合わせる必要はなく、依頼を受けてからマイペースで作品を作り、好きなタイミングで納品すればよいだけだからだ。
そして「場所」も合わせる必要はない。
なぜならオンライン完結型ゆえに、北海道の人と沖縄の人がマッチングしてもワークするからだ。
最後は「ニーズ」の話になるが、これはココナラの場合でも一致する必要がある。
バナーを作ってもらいたいのに作曲家が暇しててもしょうがないわけだ。
この様に、「時」と「場所」という要素を必要としないココナラは、タイムチケットよりもトランザクションが発生する率が高い。

もう少し良い実例を出していこう。
Rebake というサービスを皆さんは知っているだろうか。
合同会社クアッガが廃棄ロスを無くすというコンセプトの元立ち上げたサービスだ。
全国各地には凄い数のパン屋があり、そこでは毎日合計するとおびただしい数のパンが売れ残り廃棄されている。
ここに目をつけたクアッガは、この本来捨てるはず(だけど食べられる)パンを必要な人に販売するというサービスを思いついた。
これを今回のテーマであるトランザクション発生率という観点からみると、残念ながら普通に考えてなかなかワークしない。
なぜなら、仮に東京都日暮里のパン屋でその日パンが売れ残った場合、その日その時間に丁度パンが欲しかった人が (ニーズ) 、そのパンが売れ残ってることを知って(時)、そのお店に行く(場所)、必要があるからだ。
時と場所とニーズという全ての要素が必要ということはそれだけトランザクションが起きない。
ではRebakeはそのへんをどうしてるかと言うと、実はうまい具合に回避している。
まずRebakeは全国展開をしている。
北海道のパン屋も扱ってるし、千葉県のパン屋でも登録可能だ。
これだけ聞くと更にトランザクションが落ちると思うが、Rebakeは売れ残ったパンを冷凍し配送するという手段を用いて「場所」という制約を取っ払った。
北海道のパン屋でパンが売れ残っても、日暮里に住む僕でも買えるわけだ。
しかしここでまだ問題がある。
それは「時」だ。
たまたま北海道のパン屋でその日パンが余ってRebakeに登録したとしても、その日その時僕もRebakeをチェックして、その北海道のパン屋とやらのページを見ていないとトランザクションは起きない。
人間常にそんなアプリなりサービスなりをチェックするほど暇ではないのだ。
しかしRebakeはこの点も上手く回避している。
Rebakeは事前購入というスキームを採用した。
その北海道のパン屋のパンが売れ残った時、いつでも良いから発送してね、というものだ。
人気のあるパン屋は文字通り順番待ちも起きていると言う。
これならば購入するタイミングを逃さないので「時」という制約が無い。
「場所」と「時」という制約を外すことでトランザクション発生率は大きく向上しているというわけだ。
多少余談になるが、トランザクション発生率が上がるということは、何もユーザーばかりが得するわけではなく、パン屋側にしてみても嬉しい話だ。
何しろ北海道のパン屋がいきなり全国の人に買ってもらえるわけだし、しかも売れ残った分はすでにいつでも購入申込みが出ているという、大変ありがたい状況になる。
Rebakeに登録しない手はない。
パン屋はこぞって登録するし、釣られるようにしてユーザーも集まり、それにより最も肝である集客力が付きサービスの付加価値があがる。
結果運営にも金が落ちる。
非常に良いモデルだと言える。

では次に悪い実例を2つ出していこう。
最近チェックしたサービスで、こんなものがあった。
日本人を対象としたリアルタイム型SNS(チャットのようなもの)というもので、自分が気になるキーワードを入力すると、それに関連されたページに飛び、そこで同じくそのキーワードが気になってた人がいたら、その場でチャットができるというものだ。
そのSNSはビジョンファーストで構成されていて、その世界観はとても素敵だったのでよく触っていたのだが、残念ながら一度たりとて他のユーザーと出会い、チャットをしたことが無い。
なぜならそこでチャットをするには、その日その場所その時間に、同じSNSをみていて、そして同じキーワードを検索しなければならない。
LINEやFacebookのようなインフラ化したサービスならばそういうパワープレイはできるのかもしれないが、一介のスタートアップがリリースしたばかりでそんなミラクルな出会いが生まれるわけもない。
考えるまでもなく当たり前の結果である。
他にもこんなサービスがあった。
外ですれ違った人に面と向かって言いづらい事がある場合、アプリを通じてメッセージが送れますよ、というやつだ。
電車で体調を崩した時に目の前にいる人へ「体調悪いから譲って」と伝えたり、すれ違った人のシャツにクリーニングのタグが付いてたら「タグついてますよ」と伝えたり、そういう使い方を運営は想定しているようだ。
それではこのサービスでトランザクションが発生するか、というと否である。
電車の話を例に出すと、たまたま同じ電車に乗った人で、たまたま目の前の席に座ってる人が、たまたま同じアプリをインストールして、たまたま使っている可能性がどれだけあるというのか。
考えるまでもなく、ありえない話だ。

このように、トランザクションは要素が増える度に発生率が格段に落ちる。
それでは一体どのようにそれを高めていけば良いのだろうか。
それは至ってシンプルで「要素を絞れば良い」だけだ。
例えば「場所」を都内限定……いやもっと言えば渋谷限定でリリースするとか、「ニーズ」を絞って一つのことしかできないようにするとか、「時」を絞ってオンライン限定にしたり特定の時間しか使えないようにするとか。
そういう一つ一つどれかを絞ればトランザクションは生まれやすくなる。
そうしてユーザーを増やしてShareがとれて認知が広まったら、少しずつ絞った要素を開放したら良いのだ。
渋谷限定だったのを、中目黒や恵比寿まで対応可能にしたり、バナーしか依頼できなかったのをLPまで頼めるようにしたり、オープン時間を夜の4時間だけだったのを8時間に伸ばしたり。

C向けWEBサービスに於いて、トランザクションは生んでなんぼのものであり、まずはサービスが利用されないとどうしようもない。
しかし一定数の(それも少なくない数の)起業家がこの発生率を意識せず、結果、使われることのないサービスを量産していってるのが現状だ。
皆さんも新しいサービスを考えた場合、今回のような事を頭に入れて設計してみるとよいだろう。

と、こんな感じでとりあえず書いてみた。
あまり難しい内容の話ではないので、多くのStartupの起業家にとっては必要のない話題だったかもしれないが、それでも願わくば少数でも良いので誰かの気付きになってもらえたら嬉しい。

では最後にお決まりの宣伝だけをして終わりにしておこう。
僕は起業家志望者や起業家を対象としたオンラインサロン IT Startup Community を運営している。
メインターゲットはシード期またはそれ以前の起業家だ。
メインコンテンツは新規WEBサービスの分析で、週に数本、新しくリリースされたWEBサービスについて、どういう点が良くて、どういう点が悪いのか、などを書いている。
また今回のように起業に必要な基本的なコラムも書いている。
月額料金はお安めで2,980円。
今なら無料期間もあるので、是非お試しで構わないから入ってもらいたい。

というわけで、今回はこの辺で。


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